ゆるい生活

自分が一番楽なやり方で出来る子育てを模索中

電車でのはなし

特別お題「心温まるマナーの話」by JR西日本
http://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/jrwest

 

もう何年も前。

私が臨月だったころのお話。

 

臨月は毎週のように産婦人科で診察しなければならず、JRで30分の所の病院に通っていました。

当然平日の昼間にのらりくらり歩いて駅まで行って電車を待っていると

車いすに乗った小学生とお母さんがやってきたのです。

 

小学生は真っ黒のサングラスをかけてるけど目は見えて色々普通に母親と喋れている模様。

しかし特殊な車いすに何か所もバンドでしばりつけられているその子はヘッドギア

のような物までしている。

誰の目から見ても何かあるのはわかる。

当然私もそうだけど周りも見て見ぬふり。

電車に乗るのが楽しみなその子はしきりにキョロキョロ電車がまだ来ないのか見ては母親に話しかける。

清潔でいて手間も暇もお金もかけられたその子は、母親や周りにとても愛されているのが目に見えてわかった。

 

そのころの私は35歳での妊娠だったのもあり、

妊娠当初はとにかく無事に生まれてくれればと思ってたのが出産に近づくにつれ

おなかの中の子供にいろいろな欲が生まれてきていた。

その子を見ても

「ああいう子が生まれてきたら困るな」

位にしか思ってなかった。ぶっちゃけ多くの人がそうであるように。

もちろん車いすも駅員しか手助けしてなかった。

それは一日の中の小さな一コマにしか過ぎなかった・・・はずだった。

 

降りる駅が同じで、駅員に助けてもらいながら降りたその子は私と同じエレベーターに乗ることに。

その時、ずっとチラチラと見ていた車いすの小学生が突然私の方を見て

「握手しよう!」といってきた。

とっさの事で引いてしまったが、母親が先に子供を静止した。

 

それでも私は自分の小さないっぱしの偽善心を保つのに必死で私から手を差し出した。

小学生はとてもよろこんでくれて私のおなかを指さして

「大きくなったら遊んでね!」

と言って手をふって別れた。

心の中では「それはないと思うな」とひどい事を思いながらも笑顔でサヨナラ。

 

家に帰った私は「ヘッドギア」「車いす」「サングラス」と検索した。

恥ずかしながらどういう病気なのかわからなかったのだ。

答えはすぐに出てきた

てんかん

しかも重度の。

てんかんなだけで普通のこころと知識を持った子供が、普通校から拒まれやすいことも知った。

その子は養護学校の話をしていたから、他の子のように思いっきり運動もできず

教育も同じようにはできているのか私にはわからない。

けど、周りに愛されているからこそ、無邪気な言葉が出るのはわかる。

小さな世界で過ごしているあの子が、私と握手したことで何か変わってくれただろうか?

 

私はすぐに自分が見て見ぬふりをしたことも、握手を引いてしまったことも

猛烈に恥ずかしくなった。

自然に涙が出て、改めて自分の子供に対する欲がどこまでも自分勝手であることを思い知らされた。

「無事に生まれてくれたらいい」

その思いを改めてからの出産ができたのも、あの子のおかげ。

 

今では、走り回って怒りどおしな日々を送っている私だけど

「無事に生まれてくれたらいい」

から

「無事に育ってくれたらいい」

になった今も、電車を見るたびに思い出す。

日常の一コマが何年も後を引く、私にとって衝撃的な事件となった。

 

今まで見て見ぬふりしていたけど

手を貸してほしそうな時には、自然に手を差し伸べれる親子になろうと思う。

あの子に胸を張って会えるように。